Yuka Tanaka
田中 佑香
広島県出身。早稲田大学第二文学部 表現・芸術専修卒業。
大学で西洋美術史や美学を学ぶ一方、アンティークビーズを用いたアクセサリーを制作し始める。
大学卒業後、本格的なジュエリー制作を志し、彫金職人に師事。
2012年、ジュエリーブランドmuskaをスタート。
2015年、シンガポールに渡星。インドや東南アジアなど周辺国を回る。
帰国後、2018年に株式会社第六夜を設立。
2019年には、ジュエリーショップ第六夜をオープンする。
2017年からは表現の領域を布にも広げ、衣装製作なども行う。
古来ある美と概念を現代の装飾に落とし込むことをデザインの基本的な考えとしている。
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muskaを始めたときのこと
「当時、私は作家活動をする傍ら彫金職人の下で宝飾技術を学んでいました。
しかし、東日本大震災が起こり、社会が不安定になっている中で、あえてジュエリーを作る意義が見出せなくなっていました。
ところが、震災から1年後の3月、ようやく訪れることができたトルコでの経験が自分の今後を大きく変えました。
祈り・自然と共に暮らす人々に心を動かされました。
熱心に祈るその姿は、自分と大いなるものとのつながり以外の存在を感じさせません。
そうした人々が一歩街に出れば、商魂たくましい商人として、子供たちを世話する強い母として、一瞬一瞬をダイナミックに生きている。
些細なことに煩わされず、ただ自分らしく生きているようで、その姿は、街の喧騒と相まってとても美しく活きいきとしたものでした。
モスクの中は天井まで自然や幾何学の文様で埋め尽くされており、まるで小宇宙のように思えました。
そこに静かに佇んでいると、私自身も自然や宇宙と一体になったような感覚を抱き、彼らの生き方が少し分かった気持ちになりました。
奇岩で有名なカッパドキアでは、遥か彼方まで続く地平を上空から眺める中で、自然の広大さと荒々しさに圧倒されました。
日本では決して見ることのできない、ただ続く荒涼とした大地。
そこには、人知を超えた絶対的な力と、それと同時に、美しいものも汚いものも全てを包み込むしなやかさが存在していました。
私はとても小さい。そんな私を、どこまでも力強い自然がくるんでいる。
大きく包み込まれるような感覚は、モスクで抱いた感覚に似ていて、それよりも更に強く、震災後の、心が揺れていた私を癒しました。
私自身も、身に着けることでほんの少しでもそうした安心感を得られるような、強く柔らかなジュエリーを作りたいと、その時、思い至りました。
帰国後、こうした想いのもと、トルコ語で『お守り』を意味する<muska>という名前を付けてジュエリーを作り始めました。」